エンピツの日記

働くこと/耳が聞こえないこと/社会で生きるということ。漫画とアニメと食べることしか楽しみがない

「殺人鬼から逃げる夜」主人公と同じ耳が聞こえない私の感想

Netflixで配信されている「殺人鬼から逃げる夜」を観た。

韓国の映画で、聴覚障害を持つ主人公が事件現場を目撃してしまい、殺人鬼に追われる!っていうストーリー。私も同じく聴覚障害者なので、こういう障害者を主人公にした作品はすごく興味がある。

 

ここからは「聴覚障害者」ではなく「ろう者」という表現で、登場人物たちを紹介していく。

この映画に出てくるろう者は2人。主人公のギョンミと、その母親。手話で仲睦まじく話す様子は観ているこちらも心が温かくなる。でもこの後、この2人にめっちゃイライラするのであった。

 

イライラの要因

 

ろう者2人がまともに助けを求められない。「伝えること」にめちゃくちゃ手間取っている。ろう者が健聴者に何かを伝えるのは難しいんだぞっていうメッセージを残したかったのかもしれないけど、だからといってこれはさすがに現実的ではないんじゃないの?っていうレベル。警察官に犯人を伝えようとするにも、ジェスチャーでずっと「アッ…アッ‥‥」ってしてるし、言葉で伝えなよ!紙に書け!スマホに文字を打て!情報伝達手段はいくつかあるだろ!めちゃくちゃ大事なことなんだからしっかりしてくれ!!ってすごっくイライラした。私だって耳聞こえないし上手く話せないけど、大事なことはきちんと言葉にして伝えようと努力するわって。

 

以上がイラついた理由だけれど、物語の性質上、こういう演出をしないとストーリーが進展しないとか、(作品の)伝えたいことが観ている人に伝わらないとかあるんだろうなっていうのは理解した…つもり。



世間はこんなにも障害者に冷たい?

 

上の章で、上手く伝えられないろう者2人へのイライラを書いたが、2人が伝えようとしている相手(健聴者)の態度も気になった。絶対に分かっていないのに、「分かったわかった」と勝手にすませようとする。もう少し、丁寧に話を聞こうとする姿勢を見せてもいいし、「こんなに慌てるってことは何かあるのかも」って気にかけてくれてもいいのではないか? 「障害者の言うことは信じない」っていう心理が読めてしまい、不快だった…。

 

自分が同じ立場だったらこうする

 

終盤にギョンミは人通りの多い街に逃げる。たくさんの人に手話で助けを求めるけど、当然、手話が分かる人はおらず、気味悪そうな表情で避けられる。このとき、スマホは持っていないから、文字で伝えるってことができない状態。自分だったら声をだして「助けてください」って伝える。相手に「この人、なんて言ってるんだろう?」と伝わらなくても。だってボロボロの身なり(しかも靴を履いてない)で何かを訴えている表情なのに、それでも何もしない人っているの…?いたらその人、人としてどうなの…?まあ、日本だったら、接近はしないで遠くから通報するのかな(それでも良い。警察に来てほしい)。

その後、ギョンミは犯人に見つかり「その子は俺の妹なんだ」って噓をつかれて、大衆は「なんだ妹かよ」って感じに引いていくのだが、それも不自然だよね。ちょっとストーリーが強引すぎて、違和感ばかりだった。

 

これほしい!映画で観た聴覚障害者を助ける便利グッズ

 

ギョンミは車を運転するんだけど、そのときに「音が鳴ると反応するセンサー」がダッシュボード付近に置いてあった。

これ、私は日本では見たことがないんだけど、車にあったら救急車がきているときに役立ちそう!

ろう者の知り合いで、「救急車がきていることに気づくのが遅れる」って声をよく聞くので(周りの車が止まっているのを見て、ようやく状況を理解するらしい)、こういうのがあったら救急車が近づいてきていることが分かりそうだよね。

ちなみに映画では、後ろからバイクが近づいてきたときなどにセンサーが反応して、ギョンミに危険を知らせる役割をしていた。

 

最後に「シンバルを持ったウサギ」の置き物。こいつはシリアスな場面のときに映るんだけど、私は最初、音が鳴ったらウサギがシンバルを叩く仕組みなのかなって思った(ただの雑貨)。

フラッシュライトで知らせるセンサーよりも、こういう可愛いセンサーの方が楽しいし好き!誰か発明してくれないかな。あったら絶対に買う。

・・・

自分も同じ聴覚障害者だけど、共感しがたいシーンが多かった。総合的には、「観た後にまあ満足できた」っていう感じだ。凶悪な犯人から逃げるシーンはハラハラドキドキするよね。サスペンス系が結構好きなので、こういう作品は「緊張したらもう満足する」タイプ。

 

おまけ☆韓国の手話

手話は基本、国によって異なるのだけど、同じ/似ている表現のものも多い。ギョンミが手話で何を言っているのかなんとなく理解できた。

ちなみに「結婚」「したい」「分からない」などは日本の手話と同じ表現でした。

 

ではでは!